第2回:代表的サービスの現状(アンビエント記録・トリアージ・病理ほか)
全体マップ——用途で分かれる5つの島

医療AI Webサービスは、担う仕事ごとに大きく5つに分かれます。順に代表例を見ていきます。
アンビエント診療記録(Ambient documentation)
医師-患者の会話を聞き取り、カルテ草案(SOAP等)を生成。医師の事務負担軽減が狙いで、最も費用対効果が見えやすい領域です。
- 例:Abridge / Nuance DAX Copilot(Microsoft) / Ambience / Suki / Nabla
用語解説|SOAP:診療記録の標準形式(Subjective 主訴/Objective 所見/Assessment 評価/Plan 計画)。アンビエントAIはこの形にまとめて下書きします。
患者向けエージェント・トリアージ
受診前の症状相談や問診を担い、適切な受診先・緊急度を案内します。
- 例:Hippocratic AI(患者向け音声エージェント)/ K Health(チャット問診)/ Ada Health(症状チェッカー)
画像トリアージ(救急・放射線)
緊急所見を検出し、専門医へ即時通知してワークフローを短縮。"見落とし"と"時間"を減らします。
- 例:Aidoc / Viz.ai / RapidAI(脳卒中・肺塞栓 等)
用語解説|トリアージ:緊急度に応じて対応の優先順位を付けること。画像AIは「危険な所見」を先頭に上げ、専門医の初動を早めます。
病理・ゲノム/腫瘍学
- 例:PathAI / Paige(病理画像)/ Tempus(腫瘍・ゲノム×臨床データ)
臨床意思決定支援・エビデンス検索
- 例:OpenEvidence / Glass Health(鑑別・プラン)/ 既存の UpToDate 等のAI化
EHR連携——普及の本当の鍵

Epic をはじめEHRベンダが、メッセージ返信草案・要約・検索などのAI機能を統合しています。患者ポータル(MyChart 等)経由の体験が、普及の最大の通り道です。
キーポイント:医療AIは「単体のすごさ」より、既存ワークフロー(EHR・患者ポータル)にどれだけ自然に溶け込むかで普及が決まります。スタンドアロンの名作より、Epicに乗った平凡が広がる——それが現実です。
各サービスの「市場・問題点」は次回(第3回)で踏み込みます。
参考文献
- 各社公式サイト(Abridge / Nuance DAX / Ambience / Suki / Nabla / Hippocratic AI / K Health / Ada Health / Aidoc / Viz.ai / RapidAI / PathAI / Paige / Tempus / OpenEvidence / Glass Health)。
- Epic Systems:EHRおよびAI機能(MyChart 連携)の公式発表。
📚 このシリーズ(全5回)(米国の医療AI Webサービス(第1シリーズ))
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